間宮さんのニセ花嫁【完】
「『自分を大事にしろ』って、間宮さんから言われると思わなかったなぁって」
「っ……」
昔、自分のことは二の次に周りの人のことばかりを優先して自分のことを疎かにしていた間宮さん。
そんな間宮さんのことを凄く怒ったことが一度あった。それもさっきの彼のように大きな声で。
その時、まだ彼は気付いていなかった。自分がどれだけ周りから大切にされているか。
それを今は彼から私が気付かされたんだ。
「というか、名前……」
「え、あ……すみません、思わず昔の呼び方に戻ってましたね」
「いや、構わないよ。と、身体冷えてるな。風呂沸かすから入ってくれ」
「お風呂?」
でも、と口を開いた私に被せるように彼が言う。
「まだタクシー混んでるだろ。今日はもう一緒に泊まろう。運良くツインの部屋取れたから」
「っ……」
それってつまり……
顔を赤くしたまま玄関から動けないでいる私を見兼ねて彼が意地悪そうに笑った。
「どうした? 一緒に風呂入るか?」
「っ、ひ、一人で入ります!」
カチコチとぎこちない動きで脱衣所へ向かう私を彼は笑顔で見送った。