新婚蜜愛~一途な外科医とお見合い結婚いたします~
求愛 省吾side
周りから結婚話を持ちかけられるほど、辟易する経験はなかなかないだろう。
いい加減うんざりしていたが、実の父からは特にせっつかれはしなかったのが救いだった。
その唯一の救いだった父から「省吾の結婚相手に良さそうな娘さんがいる」と言われた時は父ではあるが『ブルータスお前もか』と戯れ言を抜かしたくなった。
久しぶりに取れた休日。
たまには顔を出しなさい、と言われ、実家に戻ったところ、このザマだ。
父が医院長を務めるクリニックと同じ敷地内にある自宅。
広々としたリビングに父と二人の今の状況は、どうしても気詰まりだった。
上質な黒のレザーソファに、向かい合って座る。
父の穏やかな視線の奥底にある、全てを見透かすような鋭い眼光がこちらを伺っている気がしてならない。