新婚蜜愛~一途な外科医とお見合い結婚いたします~
「気立てのいい娘さんで、医療関係者ではないから、省吾にはいいのではないかと思ってね」
気の抜けるような理由だ。
医療関係者ではない。
代々、医師を輩出する家系。
そのような家系の親のセリフとしては、些かおかしいだろう。
しかし父はそう言う人だった。
実際、母も医療関係者ではなかった。
幼馴染で小さな頃から知っていたという馴れ初めのため、医療とは対極にいるような人だった。
父自身はその結婚をかなり反対されたようだ。
その上、体も弱く医師の父を支える大変さと周りの厳しい目に耐えられず、若くして亡くなった。
それがまた周りを落胆させた。
だから彼女に医者の嫁が務まるわけがなかったのだと、心ない声も聞いた。
当時の苦々しい記憶が蘇り、口を引き結ぶ。