新婚蜜愛~一途な外科医とお見合い結婚いたします~

そのわけは 省吾side

「君と呼べば、私と距離が出来ると思っているのですか」

「そんな理由ではないよ」

「では、緊張しているからですか」

「話が、本質からズレている」

 大切な話をしているのに、のらりくらりと躱すように話す彼女に苛立ちそうになる。

 そして、近づいてきた彼女が、私の片腕を思いっきり引っ張った。

 体がぐわんと揺れ、傾いた私に彼女は唇をかすめとった。
 ほんの一瞬の出来事だった。

 微かに触れた柔らかな感触。
 思わず指先で自分の唇に触れ、ハッと我に返る。

「何故、こんな……」

 私が思い描いたシナリオで事が進むとは思ってはいなかったが、あまりにもかけ離れている。


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