新婚蜜愛~一途な外科医とお見合い結婚いたします~
「とにかく、結愛さん」
呼び掛けても返事がない。
「結愛さん?」
彼女は頭を横に振る。
状況を飲み込むまでに数秒かかった。
「嘘、だろ。話せるように、なったはずで」
真っ直ぐに見つめる彼女は、ゆっくりと口を開く。
「はい」
「そう。良かった」
安堵のため息を漏らすと、彼女の方は呆然としている。
「話せなくなると、思ったのに。話せなくなれば、別れなくて済むのでしょう?」
気丈に振る舞っていた彼女の声が震え、頬を涙が伝う。
彼女はその涙を拭おうともせず、はらはらと泣き始めた。
それはあまりにも美しく、思わず触れてしまいたくなる。
けれど、ダメだ。もう、彼女とは……。