新婚蜜愛~一途な外科医とお見合い結婚いたします~

「理由を、話すから」

「嫌です」

 ギュッと片腕を掴まれて、それを振り払えない。

「嫌です」

 ポタポタとフローリングに涙が落ちる。
 その姿が見ていられなくて、体は勝手に動いていた。
 もう片方の腕で、彼女を抱き寄せる。

 よろめいた彼女は、私の胸元に顔をうずめた。

「泣かないで。大丈夫だから。大丈夫」

 今は合図を送れない。
 背中に手を置けない。

 口先から出る『大丈夫』は、どこかに消えてなくなっていく。

 だから何度も呟いた。
『大丈夫』『大丈夫だから』

 自分にも言い聞かせるように。

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