新婚蜜愛~一途な外科医とお見合い結婚いたします~
「省吾さんはなにか勘違いをしています。父はフィンランドにいて、母はどうやら父の元に行くらしいです」
「ええ。だから結愛さんも……」
彼女は家族を求めている。
私の存在が、それを諦める理由になってはいけない。
「やっと呼んでくれましたね。名前」
彼女はそんな小さな事で、穏やかな顔をする。
「そんなことは、どうでもよくて……」
「私、ついていきませんよ」
「え」
「父が元気にしていて、母も一緒に父と幸せでいる。それがなにより嬉しいので、私は両親と離れていても構わないです」
思ってもみなかった彼女の考えに、言葉が出てこない。
もっと父親に恋い焦がれ、私との結婚を果たさなきゃいけない責任感の間で、揺れるとばかり思っていた。