新婚蜜愛~一途な外科医とお見合い結婚いたします~
「私は結婚をするのなら、仕事をセーブしたかった。父に反発していると言われ兼ねないですが、母の葬儀も人任せにするような人間にはなりたくなかった」
しばしの沈黙が降りる。
彼女は言葉を発せられないようだった。
彼女が父に憧れていると知っていたから、言わないでおこうと決めていた。
しかし、自分自身の話をする上で、この件を話さなければ、重要な部分が抜け落ちてしまう。
私は彼女の反応は期待しないまま、話を続けた。
「医師として仕事をセーブしようと思った時、産業医を知りました。そんな時でした。父からあなたを紹介されたのは」
つい、この前のように思えるのに、それがもう数十年も前のような気もする。
短くもあり、長かったように思う。
「私は、昔を懐かしんであなたに会った」
我慢ならなくなったのか、彼女が口を挟んだ。
「それで、結婚まで決めたのは、ご自身のせいで私にトラウマがあると知ったからですか。申し訳なく思って」