新婚蜜愛~一途な外科医とお見合い結婚いたします~
「それにね」
山田さんは懐かしむように、目を細めて付け加える。
「五十嵐先生はお母さん似よね。昔、事務でいたお母さん。本当にそっくりね。美人さんでね。愛嬌は五十嵐先生よりはあったけど」
「すみません。愛嬌が足りなくて」
「いいのよ。イケメンだから。それに今の事務さんも愛嬌がよくて、お母さんの時みたいに癒されるわ」
「はい。山田さん。お喋りはそのくらいにして、処置室に行きますよ」
ベテラン看護師の辻本さんに誘導され、山田さんは診察室を出て行った。
母の話が聞けるのは嬉しいものの、愛嬌がない私の性格は誰に似ているのだと不満を言いたくなる。
環境のせいで捻くれたと言われれば、それまでだけれど。
謙吾からは「完全に中身、父さん」と言われたが、親しみのあるにこやかな医師で通っていた父に、似ているはずがない。