新婚蜜愛~一途な外科医とお見合い結婚いたします~

 中村医院で働くようになると「親子三代で通っているんだよ」と嬉しい言葉を聞く機会も多い。

「はい。山田さん。胸の音、聞かせてくださいね」

 この人も父の代から通っていた、ご婦人。
 有り難いことに、前の医院長が良かったと言われないのは救いだ。

 ただ……。

「私は五十嵐先生派ですよ」

 医師が二人いるため、どちら派か、という話が患者さんの中でされているようで、対応に困る。

「そうですか。ありがとうございます。弟の中村先生も腕のいい医師ですよ」

「どちらも腕のいいのは知っていますよ。中村先生はほんわかしていてね。私はキリッとした五十嵐先生派なのよ」

「それは恐れ入ります。山田さん、この後は処置室で血圧と検尿お願いしますね」

 結愛さんも派閥らしきものがあるのは知っていて「盛り上がっているので、冷たくあしらってはダメですよ」と、注意を受ける始末。


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