新婚蜜愛~一途な外科医とお見合い結婚いたします~

誓いのキス 省吾side

 キスを、した。
 ただ触れるだけのキス。

 それが、こんなにも愛おしい。

「キスを、しても?」そう聞いた時の、おずおずと頷く彼女を見て、胸の奥がさざめいた。

 性急に重ねたい衝動を抑え、彼女が怯えないようにゆっくりと優しく触れた。
 より深く愛し合いたい気持ちを押し留め、彼女を抱き寄せる。

 ゆっくりトントントンと三回。
 背中に手を置くと、彼女も返す。

 そのやり取りに、胸の奥に温かいものが広がっていく。

 あのご夫婦を羨ましがらなくとも、自分たちのペースで自分たちらしい夫婦になっていけばいい。
 そう思えて気持ちが上向いていく。

「さあ、帰りましょう」

 異国の地でのリゾート気分と、彼女の思わぬ申し出に自分を見失っていた。
 誓いのキスを人がいなかったとはいえ、野外でするとは。

 おかしくて大笑いしたくなる衝動を堪え、クククッと笑いを噛み殺す。
 急に笑い出した私に、彼女は不安そうな顔を向けた。

「すみません。年甲斐もなく浮かれている自分がおかしくて。困りました。キス一つで浮かれています」

 私の言葉を聞いて、火がついたように顔を真っ赤にさせる彼女が顔を俯かせる。


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