新婚蜜愛~一途な外科医とお見合い結婚いたします~
「分かっています。イケメン医師と電撃結婚したとなると、一介の総務部所属の社員としては肩身が狭い」
「……ご自分で言われます?」
「自分で言わなければ、やっていられません」
「ふふ」
「なんです?」
「省吾さんも拗ねたりするんですね」
「拗ねていません」
「はい」
「信じていないでしょう」
「いいえ。幸せだなあと噛み締めています。諸事情があったとはいえ、結婚したお相手が省吾さんで良かったなあと思います」
「ええ。私も」
穏やかな時間が流れ、見つめ合う。
すると、ふいっと視線を逸らした彼女が「いけない魔法にかかってしまいそうです」と不思議なセリフを口にする。
「どんな魔法でしょう」
「それは、秘密です」
「魔法を出しているであろう人物は私なのに?」
「無自覚で出していて、タチが悪いです」
「はは。自覚して出せるようになりたいですね」
少しずつ、彼女との距離を縮めていけばいい。
もどかしく思う距離も愛おしいと思える彼女との関係は、なにものにも代え難い時間だった。