新婚蜜愛~一途な外科医とお見合い結婚いたします~

「五十嵐先生ったら、朝からノロケて大変なんですよ」

「えっ」

「ほら、五十嵐先生ご結婚されたでしょう?」

「あ、そういえば……おめでとうございます」

「ありがとう」

 書類から目を離さない五十嵐先生は、形ばかりのお礼を口にした。

 彼の外の顔は『氷の微笑王子』と呼ばれており、その美しくクールな様がいいのだそうだ。
 彼は人たらしではあるものの、決して愛想がいいわけでもなかった。

 だから職場では、親しく話したりしない。

「いつも通り冷めた感じなのに「今朝は出社したくなかった」って仰られて」

「どうかされたんですか?」

 産業医になるのは前々から決めていたと言っていたし、社員の健康を守る仕事にやり甲斐を感じると話してくれたのに……。


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