新婚蜜愛~一途な外科医とお見合い結婚いたします~
「でしたら、早めに謝って仲直りしてください。既に差し支えていますから」
彼女の言い分に苦笑する。
「内容も聞かずに、私が謝る側だと決めつけていますね」
「当たり前です。五十嵐先生のような方と結婚された女性は、謝らなきゃいけないようなヘマはしませんよ」
「ずいぶん妻を買っているんですね」
小椋さんは呆れたように笑う。
いつもと立場が逆転しているようだ。
「五十嵐先生と結婚されるのなら、よほどの策士か、よほどの人格者です。結婚されてからの五十嵐先生を見ていれば、後者なのは一目瞭然ですよ」
「策士……の方が良かったかもしれませんね」
「なにを言ってるんですか。今日、帰ったら謝ってくださいよ」
「尽力します」
結愛さんに、この話をしたら笑ってくれるだろうか。
結愛さんは人格者だそうですよ、と。
だから、いい加減、触れてもいいですか。
支離滅裂なお願いをしたくなって、背もたれに大きく背を預ける。
彼女に触れたい、けれど拒絶されたら立ち直れない。
その狭間で、もうずっと抜け出せずにいた。