新婚蜜愛~一途な外科医とお見合い結婚いたします~
「かかりつけ医はどこですか」
「中村……医院、です」
「では、タクシーに行き先も伝えておきますね」
つらそうに横たわる彼女に、なにもしてあげられない。
せめて自分が診断をし、側にいられたら……。
産業医は診断を下したり、治療や薬の処方はできない。
必要とあれば、病院の受診を勧めるだけ。
それも、彼女は父の病院に行く。
父の……。
彼女が父に憧れていると、分かった上で結婚をした。
彼女自身は、父にはファザコンの気持ちから憧れているとの自覚があると言っていた。
私も最初は父に憧れているという結愛さんに、興味が増したのも本当だ。
父は確かに立派な医師で、その父に憧れている結愛さんの目は確かだとさえ思った。
しかしそれは次第に、私を通して私の中に父を見ているのかもしれない、と思うと胸を苦しくさせた。
自ら、そうなるように仕向けたくせに。