腹黒王子の初恋
 テーブルの上に料理が並ぶ。豚の生姜焼きにエビとコーンのサラダ、みそ汁に揚げ出し豆腐。生姜焼きとみそ汁は私が作って、揚げ出し豆腐は泰晴が作ってくれた。サラダは一緒に切って盛りつけた。

 何だかんだ話しながら一緒に料理をして楽しかった。やっぱり泰晴といるのは楽しい。いつも通り。さっきの気まずいのは私が気にしすぎたかな。急に甘いこと言うのはやめてほしい。

 テーブルに座り並んだ料理を見てふと思い出した。

 ほとんどゆうきゅんと食べた料理と同じだ…胸がツキンと痛む。ゆうきゅんとカフェ行って、家でいっしょにご飯食べて。いろんなことが頭に浮かぶ。そして、ゆうきゅんが熱っぽい目で見つめながら少しずつ近づいてくるのが思いだされた。今思うと、キスしそうな雰囲気だったかも。

 ああ、もう!やらしいことばかり思い出しちゃうよ!私は首をぶんぶん振った。

「お。うまそう!ん?優芽どうした?」
「え?うんと…最近生姜焼きばかり食べてるなと思って…」
「優芽が上手に作れるのこれしかないじゃん。」
「むっ!何だと!そんなことな…あるけどっ!」
「はははっ」

 私は泰晴の腕をポカポカ叩いた。泰晴が明るく笑ってからふと急に甘く笑いながら私の叩く手を握り、片方の手で頭をなでた。

「大丈夫、一緒に料理しようぜ。俺様が直々に教えてやるよ。」

 ニヤリとしてデコピンをされた。

「なにそれ!上目線!私だってやればできるからね」
「はっ。どーだか。」

 泰晴の満面の笑顔。私が好きな笑顔。はー。ギクリとしたよ。さっきの甘い雰囲気は気のせいだったかな。

「よし、食おーぜ」

 泰晴が明るく言った。
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