腹黒王子の初恋
 時計を見るともうすぐ夜12時。一緒にご飯を食べて、デザート食べて、話をしながらテレビを見たり。もうこんな時間。泰晴といると楽しくて時間が過ぎるのに気づかないことが多い。

「もう12時だよ。早いね。」
「お、ホントだ。」
 泰晴も自分の腕時計を見てつぶやく。

「ね?どうする?泊まる?」
「・・・・・・・」

 泰晴が固まる。

「・・・本気で言ってる?」
「え?何?よく泊まるじゃん。」
「それは莉子もいるときだろ。今は俺たち付き合ってんだけど。」
「うん・・・?」

 はぁ。泰晴が溜息をついた。

「ホント意識してねぇな。してんのは俺だけかよ。」

 腕を引っ張られて抱き締められた。背の高い泰晴だからちょうど胸のところに私の頭が来た。うわ。すっごく早い心臓の音。

「なぁ。俺、泊まったら優芽に何もしない自信ないけど、泊まっていい?」
「…え?何を?」
「何しようか・・・」

 急に近すぎる距離に固まる私。少しの沈黙の後。泰晴が体を離しふっと笑った。

「何もしねーよ。」

 明るく言う泰晴の声とは逆に苦しそうな表情。

「…あっ…」

 思わず手が伸びたけど触れることはできなかった。

「もうすぐクリスマスだろ。何しようか。」
「えっ?クリスマス?」
「イブも当日もあけとけよ?」
「うん…どうせあいてるよ。他に会う人いないし…」
「だよな~友達いないもんな。はは。」

 いつものように笑う泰晴だけど少しぎこちない。

「よし、じゃ、俺帰るから。またな。」
「うん…」

 その夜はなかなか寝付けなかった。
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