腹黒王子の初恋

「…ずえさん？梢さん！」

　名前を呼ばれてはっと顔を上げた。みんなが私を見ている。やば！全然聞いてなかった！

「梢さん大丈夫？もしかして体調悪い？」
「えっ...そんなことないです。申し訳ありません。」

　進行役の先輩が心配そうに聞いてくる。

「そう？無理しないでね。気分悪くなったらすぐ言うのよ。それじゃあ、続けます。」

　よそ事を考えて会議に集中していなかった私が悪いのにすごく心配されてしまった。いつもは妄想していても半分はちゃんと話を聞いているのに、今日は全く話が聞けていなかった。自分のそんな態度に自己嫌悪に陥る。それにみんなに注目されすぎて怖い。

「梢さん、受付で渡す資料と名簿は準備できているかしら？」
「はい、大丈夫です。」
「梢さんは受付が終わったらプロジェクタの準備。会社紹介のプレゼンテーションファイルの修正は済んでいる？」
「はい、大丈夫です。」
「OK。それから…」

　私の担当の確認が終わり次の確認事項へと移る。眠気も一気に吹き飛んだ。ちゃんと集中しなきゃ。顔をぱちぱち叩いた。