腹黒王子の初恋
 今日は会社説明会。いい人材をゲットするためにも、会社を知ってもらうためにも、重要なイベントだ。

 大学生の子たちが少しずつ集まってきた。まだ着慣れないスーツを着て緊張した様子で列に並ぶのをほほえましく感じる。

 あーみんなかわいいっ。にやにやと緩んでしまわないように無表情を貫く。

「こんにちは。本日は弊社の説明会に来ていただきありがとうございます。お名前は…前から順にお席でお待ちください。」



 学生達がほとんど席につき、一息着いた頃、泰晴とゆうきゅんが来た。泰晴が笑顔で手を振って行く。私も無表情で「がんばれ」と念を送る。二人には従業員代表の挨拶という重要な仕事がある。泰晴は何回かしているから慣れているだろうけど、ゆうきゅんは大丈夫かな。ゆうきゅんの方を見るがこちらを見ることなくすっと行ってしまった。またツキンと胸が痛んだ。

 最近のゆうきゅんは知り合う前よりももっと冷たくなった。必要以上に他人だ。涙がこぼれそうになるのをぐっとこらえた。
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