腹黒王子の初恋
 家に着きドアを後ろ手に締めてその場に座り込む。

 ぽろぽろと涙がこぼれた。

 くるしい。つらい。

 胸の中でいろいろな感情が暴れる。

 どのくらいそうしていたのだろうか。電話が鳴った。泰晴だ。

「…もしもし?」
「おー優芽!やっと出た!家か?」
「うん」
「帰る前に俺に言って行けよな。心配しただろ。」
「ご...ごめん」

 泰晴の優しい声に安心する一方で、胸が痛む。

「何?泣いてるのか?」
「え...泣いてないよ」
「どうかした?」
「何もないって。」
「ふーん、ちょっと待ってろ」

 急に電話を切られた。
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