晴れた日に降る雨のように
祐樹の背が見えなくなり、私は手で顔を覆って大きく息を吐く。

毎日過ぎていくありきたりの日常の中で、こんな気持ちが無ければ心穏やかに、平穏に過ごせるはずで、今日だって参加しないという選択肢だってあったはずだった。

それでもここへ来てしまい、こんな苦しい気持ちを味わう。

でも、それ以上に心の中に広がるどうしようもない気持ち。

そんな自分の気持ちを持て余して、身動きがとれなくなる。そんなことわかりきっていたはずなのに。

もう、このあたりで終わりにするべきだ。

不意に沸いたその感情が私を支配していく。

顔を上げて空を見上げると、綺麗な月が私を見下ろしている気がした。

バカだなって嘲笑っているのか、励ましてくれているのかは誰も知らない。

月はただそこにあるだけだ。

「あき。お待たせ……」

「好き……」

かぶせるようにいった私の言葉に、祐樹の表情は初めてみる表情で、どんな感情なのか、私には読み取ることができなかった。

その瞬間、すべての色が消えた気がした。

真っ白な世界が私を包んだ。
< 11 / 25 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop