琥珀の中の一等星
「まず本屋に行くんだったな」
 リゲルが言った。そのとおり、向かうのは街でも一番大きな本屋だ。
「うん。今度の試験が外国語なの。教科書よりもうちょっと詳しいのが欲しくて」
「勉強熱心だな。良いこった」
 ライラの返事にリゲルは、ふっと笑ってくれたものの、ライラはちょっと申し訳なくなった。
 中等科卒業間近な自分とは違って、リゲルは初等科しか出ていないのだ。彼がもしもっと勉強したい、と思っていたのであれば、こんなことは見せつけになるのかもしれなかった。
 でも彼は笑ってくれたので、良いことにする。割り切りのいい彼のことだ。うじうじ引きずっているようには思えない。
 話した通り、本屋で教材を見て、わかりやすそうな参考書があったのでそれを購入した。
 そのあとは雑貨屋。新しい便せんや封筒が欲しかったのだ。
 結婚した、従姉妹のお姉さん。結婚して夫となった男性と、少し遠い場所へ越してしまった。なので手紙を書こうと思ったのだ。
 今まで使っていたものは残り少なかったし、もう少し洒落たものが欲しかった。大人っぽくなったと言ってもらえたので。それにふさわしいようなお手紙を書かなければ、と。
 そのあとは食器屋を少し見た。母が「新しいココットがほしいわね」と言っていたのだ。寒くなるのだ、温かい料理を作るのに必需品。
 ココットは、ちゃんとしたものを買おうと思えば少し値段が張る。だから今日は偵察のつもりだった。良さそうなものがあったなら、母に伝えて改めて買い物に来るつもりだったのだ。
 目星をつけたのは、深緑の小型のものだった。前菜とする料理に向いているだろう。
 これ、お母さんに今度教えてあげよう。
 そんなふうに考えて、見てくれた店員さんに、「ちょっと考えてみますね」と言って、店を出たのだった。
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