※彼の愛情表現は、少しだけ重すぎる。


同じ学校に転校してくるだけでも信じられないのに、まさか同じクラスになるなんて。


さらなる奇跡にドキドキと胸が高鳴り出すのを、「おはようございまーす!」と遮ったのは、教室に入ってきた担任の30代の女教師だった。


まだスクールバックを肩にかけたままだった私は、慌てて舞香の席から少し離れた自分の席に戻る。


まわりからもだるそうな足音があちこちから聞こえてきて、それらが静かになったのを確認した頃、教卓に立った担任がよく通る声をあげた。


「SHRの時間ですが、その前にみんなにお知らせしたいことがあります」


この流れはと、心臓が音速をあげた。

自然と背筋が伸びる。


すると予想どおり、担任はとっておきのサプライズのように胸の前で手を合わせて声音をきらめかせた。


「実は今日からこのクラスに仲間がひとり増えます! さぁ、入ってきて」


担任の声を合図に転校生が教室に足を踏み入れたその瞬間、目に見えないはずの春風が教室に吹き込んできたかのような、そんな錯覚を起こした。

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