※彼の愛情表現は、少しだけ重すぎる。
すらっとした手足、アシンメトリーの柔らかそうな髪、人目をひく整った中性的な顔立ち。
──黒板の前に立ったその男子は、今朝電車で助けた彼だった。
「え! やば……」
「めっちゃイケメンじゃん!」
転校生が姿を現した瞬間、教室のあちこちから女子の浮き足立った黄色い声が聞こえてくる。
「さ、自己紹介して?」
「ユキです。よろしくお願いします」
ずっと画面の向こうにいた彼の、初めて知った名前が、耳にすっと馴染んでいく。
自己紹介や教室のざわめきを耳にしながらも、心はもうどこか違うところにいっていた。
だって、はるくんが目の前にいる。
しかもそれは、今朝出会ってときめきを感じた相手で――。
ふんわり控えめに笑う彼を見て、心の芯が熱くなっていく。
会ったこともないし、目の前の彼そのものを想像していた訳ではないのに、自分の中のはるくん像に一ミリの違和感もなくぴったり嵌まる感覚だ。