※彼の愛情表現は、少しだけ重すぎる。


突然明かされた秘密に、鼓動が逸り思考回路がショートしそうになる。


「どういう、ことですか……先生……」


頭の中では先生の声が何度も繰り返されるばかりで、言葉として形を成さない。


そんな私が理解できるようにか、香山先生はゆっくり語りかけてくる。


「まず、ユキと俺は従兄弟だ。そしてユキは生まれつき心臓の病気を患っていて18年間病院のベッドから出たことがない。余命は去年で尽きるはずだった」


ユキの手を、それだけ与えられた子どもみたいに縋るように握りしめ、香山先生の言葉をひとつひとつ頭の中に必死に刻み込む。


こくりと、息を呑む自分の喉の音がやけに大きく響く。


けれど息継ぎの音すら聞き漏らしてはいけない気がして、必死に耳を澄ませた。


「俺にエンプロイドエンジニアの友人がいることを知っていたユキは、頼み込んできた。自分をエンプロイドにしてほしいと。余命がわずかなユキにとって、生き永らえる手段はそれしかなかったんだ。もちろん最初は反対した。エンプロイドになってこの世界を生きるということは、残酷なほどにつらいことの連続だから」


午後の授業が始まったらしい。

ここに来た時は騒がしい声が時折聞こえてきていたのに、気づけば、どれだけ耳を澄ませても聞こえてくるのは香山先生の声とユキと私の鼓動の音だけになっていた。

< 162 / 185 >

この作品をシェア

pagetop