※彼の愛情表現は、少しだけ重すぎる。
板挟みになって、身動きがとれなくなって……あれ、舞香がいない。
リノリウムの床ばかりを映していた視線をばっとあげると、気づかぬうちに少し先まで歩いた舞香が、立ち止まって私を振り返っていた。
そこに、さっきまでの笑顔はない。
「そういえばはのんさ、あの転校生エンプロイドとやっぱり知り合い?」
――エンプロイド。
舞香の喉から発せられる色も温度もないその言葉に、心が凍りついた気がした。
「え? どうしたの、急に」
どうしよう。自分でも分かるくらい、声が緊張してる。
冷静を努めようとすればするほど、喉の変なところに力がこもってしまう。
「今朝、あの転校生エンプロイドの手袋つけてたから」
私に向けられるのは無機質な声と咎めるような瞳だけなのに、それは頭を殴るに等しい衝撃を私に与えた。
今朝、駅でユキに借りた手袋を、私はつい軽率にも電車の中で両手にはめて登校してしまった。
まさかそんなところまで見られていたなんて。