※彼の愛情表現は、少しだけ重すぎる。
「具合が悪いなら保健室行こう? おぶっていくから」
「は……?」
「はのんちゃんのこと送り届けたら、また俺はマラソン大会に戻る。それならだれも気づかないし、いいよね」
そんなことをしたら、ユキはここまで走ってきたのに、さらに往復分走ることになる。
すでに半分の距離を超えているし、走るのは苦手だと言っていたくせに。
「……嫌だって言ったら?」
「無理にでも連れて行く。あとで俺のこといくらでも殴っていいから」
いつになく、ユキの声が真剣で頑固だ。
「でも、今だけは俺の言うこと聞いて」
揺るがない瞳でまっすぐ見つめられ、私は逃げるように目を伏せた。
髪を乱して格好なんて全然つかないのに、ユキはそんなこと全く気にせず、真正面からぶつかってくる。
……ユキの言葉に心が揺られたからではない。
だれかに見られたらという不安もあったけれど、今の自分にひとりで学校まで残る気力と体力は残っていなかったから。だから。
「……わかった」
おとなしく頷くと、ユキはにこりと微笑んで、しゃがみこんだまま私に背を向けた。
「背中、乗れる?」
「うん」