※彼の愛情表現は、少しだけ重すぎる。
その背に体を預けると、ユキがゆっくり立ち上がり、歩きだした。
触れる部分からユキの体温を感じて、透明人間になりかけていた私の存在が今ここにあることを実感する。
カラカラとなにかが外れたような音を立てながら、私たちの横を、自転車に乗ったおじさんがすれ違っていく。
おぶられているところなんて見られて、普段の私だったら恥ずかしがるところだけど、今は離れる気も起きなくて、逆にぱたんと背中に頬をつけた。
優しい香りが、私の鼻孔を満たす。
体の中からは、苦しげな呼吸音が聞こえてくる。
私を運んでまたマラソンに戻るなんて馬鹿だ。
ユキの優しさは容赦がなくて、ささくれ立つ心には刺激が強すぎる。