※彼の愛情表現は、少しだけ重すぎる。





「お疲れー!」

「めちゃ足速かったね~」


保健室の外のグラウンドから、きゃいきゃいと騒ぐ声が聞こえてくる。


私は保健室に一台だけあるベッドに横になっていた。

窓はカーテンに邪魔され、音だけでしか状況を把握できないけれど、とても鮮明に外の景色が分かる。


舞香たちはやはり一番にグラウンドに戻ってきたらしい。

そして――ユキも。


「彼、無事帰ってきたよ。ビリじゃなかった」


カーテンの向こうで影が揺れて、保健室からグラウンドを眺めていたらしい香山先生が私に向かって告げてきた。


「そう、ですか」


無事に帰ってきたことに安堵し、それから白い天井を見つめる。


「……香山先生」


問いかけたくなったのは、多分気まぐれ。

脳にまだ靄がかかっているように、ふわふわしていたから。


けれどそんな曖昧な問いかけに、香山先生は「なんだ?」と答える。

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