僕の庭
じゃあごちそうさま、とお金を支払って席を立った僕に、花保理は『また来てくれる?』と聞いた。


「……ああ、ここの料理は旨いから。また来る」


「うん」


にこりと笑った彼女の笑顔に、僕はまた気恥ずかしさを感じて、視線をそらした。



それから、僕はこまめに彼女の働く定食屋に足を運ぶようになった。
昼時と夕暮れ時を外して行くと、彼女と少し長く話せる事を知ってからは、その時間帯は避けていくようにした。
たまには彼女の休憩時間に当たり、彼女と一緒に食事をとれる事もあった。


彼女のおかげなのだろう、僕は生活に潤いのようなものを感じられるようになった。
両親が残したお金でバイクを買い、配達の仕事についた。慣れない仕事に体は軋み、家に戻れば眠るだけ、というような日々になったが、それは母が生きていた時のそれに似た充足感があり、辛くなかった。
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