僕の庭
「じゃあ、頂きます」

僕たちは湯飲みを捧げ持って、恭しく飲んだ。


「こんなにおいしいの、初めて」


佳穂がほぅ、と溜め息をついた。


「そこいらの店で売ってるやつだと思っていたけど。そんなに旨いのかい」


「美味しいわ。でもそれだけじゃないの。
こんな綺麗な桜眺めながらだと、何倍もおいしく感じるものでしょう?」


「そうか。そうだな」


湯飲みに口をつける佳穂の横顔を見て、僕もゆっくりと湯飲みを傾けた。
誰かとこうして並んで桜を眺めるなんて何年ぶりだろう。
確かに、一人で飲むよりは遥かに旨い。

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