僕の庭
桜の木の陰にもみじがあるのに気がついたのは、それからしばらくしてからの事だった。

日課の水やりをしていた僕は、持っていたじょうろを置き、もみじに近付いた。

座り込んで顔を近付けると、緑から赤への鮮やかなグラデーションが目に飛び込んだ。

こんな所にもみじなんてあったのか……。

僕はしばらくもみじの前に佇んでいた。


「おーじさんっ、こんにちは」


背中で声がして、僕は弾かれたように振り向いた。


「あ、ああ……。君か」


「今日は、絵は描いていないの?」


佳穂は、僕の背中越しに小さなもみじの木を見下ろした。


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