僕の庭
僕は9号のキャンバスを縁側に出した。
絵の具、絵筆、パレット、画材道具を横の作業机に並べる。

僕は、もみじの絵を描こうと思う。
びわのいない膝はまだ寂しいけれど、僕は再び絵筆を握ろう。



「絵を、描き始めたの?」


庭に、佳穂の姿が現れた。


「ああ」


僕は下書き用の鉛筆を動かしながら返事をした。


「そう、よかった」


佳穂は嬉しそうな声音で言い、僕の横に座った。
キャンバスを覗いてくすりと笑う。


「やっぱりもみじの絵ね。そうだと思った」


「いけないかい?」


「いいえ。もみじは好きよ。暖かいもの」


「そうか」

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