僕の庭
僕は小さなもみじに集中して、鉛筆を動かしていた。
つい膝に目を落としてしまい、ふと動きをとめてしまいそうになるが、
佳穂の気配で顔を上げる。

そんな佳穂は、僕が絵を描く様をただ黙って見つめていた。
キャンバスには小さな木が姿を現しだしていた。


「よし。君、もみじの近くに立ちなさい」


「え、また?」


急に口を開いた僕に、佳穂が驚いたように言った。


「前の二枚にも君がいるんだぞ。いないとおかしいだろう」


僕はキャンバスから目を逸らさないまま答えた。
佳穂は少し僕の様子を窺うようにしていたが、くすりと笑って立ち上がった。


「仕方ないなあ。どうしたらいいの?」


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