君の隣でみる夢
「柚葉・・・柚葉・・・」
手術している柚葉のすぐ横に永遠は立っていた。
緊急帝王切開をしている医師と、脳外科の医師が柚葉の脳波を調べている。
柚葉の呼吸の状態が悪く、永遠は柚葉が倒れてすぐに産科の医師に代わって気管内挿管をしていた。
その時のことを思い出すと手が震えた。
この手で・・・柚葉の呼吸を機械に託した・・・。このままずっと柚葉の意識も呼吸も戻らなかったらという恐怖に足も震える。
「柚葉・・・」
この時ほど柚葉の耳が聞こえていたらと思うことはなかった。

過去の後悔が再び永遠を襲う。

せめて右耳だけでも聞こえていたら・・・。

この声が届いて柚葉の意識が戻ったかもしれないのに・・・。

なんであの時守れなかったんだよ・・・

そんなことを考えながら唇をかみしめて柚葉の手を握った。
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