キンダーガーテン五      ~ここが居場所~

サイン

「違うから………。
別れる気なんてないから。
あの。
唯ちゃん。
……………………俺と結婚して下さい。」

……………………………………。

別れなくて良いんだ。

けど…………

またプロポーズ?

もちろん嬉しいんだけど………

って思っていたら。

テーブルの上に、スッと一枚の用紙が置かれた。

「俺の名前は、入ってる。
後はここに唯ちゃんの名前を……………」って。

置かれていたのは

婚姻届。

結婚して下さいって………………

本当に結婚…………するんだ………。

さっきまでとは違う涙が溢れる。

「ちょっと、トイレ行って来る。」と叔父さん。

「俺も、美香に電話しよっと。」とお兄ちゃんも立ち上がり。

「10分な。」と悠君の頭を撫でて、立ち去って行った。




……………………………

「こっちにおいで。」

悠君の膝を叩いて呼ばれる。

隣に座る悠君の膝に座ると

「あれから一人で…………色々考えてた。
ヤキモチ妬いてガキ臭い俺が悪いんだけど………。
唯といると………大切過ぎて、不安なんだ。
……………遠くで見守っていた頃は
時々話して笑ってくれてるだけで良かったんだけど。
つき合うようになると。
コウにヤキモチ妬いたりして………
周りの男たちの視線が気になって、落ち着かなくて。
唯ちゃんを随分泣かせてしまって………。
婚約したら落ち着くかと思ったんだけど。
思ってた割には『婚約者』って………不安定で。
この間の病院みたいな奴がいたら…………
やっぱりヤキモチ妬いてイライラして………。
もしかしたら、結婚しても変わらないかもしれないんだけど………。
『俺の嫁さんだ!』って堂々と言えたら…………
唯を泣かせずにすむのかな?って……………。
結婚したい理由がこんなのって…………嫌だよね?
申し訳なく思ってるし。
兄貴や園長にも『アホ!』って怒られたんだけど…………。
もしこんな情けない俺でも良かったら…………
結婚して下さい。」
< 187 / 398 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop