キンダーガーテン五      ~ここが居場所~
「そんなのダメだよ。
香川さんもみんなも、子供たちも悲しむよ。
それに………先生も。
唯の言い方が悪くて、怒らせちゃったけど……。
何かされた訳じゃないよ。」

私の言葉に首を振って………。

「ホントは、色々あったんだ。
唯ちゃんを怖がらせないように、みんなが協力して庇ってくれてたけど。
ファックスや嫌がらせ電話もそうだし。
園にも、電話をして来たり………色々ね。」

どうして?

先生の元彼女だったら

先生のこと………好きだった人のこと………

困らせたくないよね??

またいつもの癖で、声に出してたみたい。

「唯ちゃんみたいな人だったら良かったんだけどね。
彼女は……
大学時代に出会って付き合った。
俺は、家を出て下宿してたから………
まさかウチの事が、大学で噂になってるなんて思わなかった。
一応、親父は会社を経営してるし
兄貴が興した会社も、そこそこ上手くいってたみたいだった。
彼女は、そんな俺だから近づいたみたいだった。
よく『お家に帰らないの?』と聞いてきたから。
『実家を出て決別してる。』と話すと、興味がなくなったらしくて
別れた。
それから、この間のショーまで顔を見ることはなかったんだ。
だから………
急にこんな事をする意味が分からず
みんなに協力してもらって、調べてた。
後少しで全てが分かりそうだったから
唯ちゃんには『待って』って言ったんだけど………
その判断が間違ってて、痛い思いをさせてしまった…………。
一番大切な唯ちゃんに
怖くて痛い思いをさせて……………」

だんだん涙声になる先生。

まだ痛むけど……。

先生の心の方が痛々しかったから

起き上がって、そっと頭を撫でてみた。
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