5分以内で読めるショート・ホラー集
11 きもちがいいから
きもちがいいから



誕生日プレゼントに、自転車を買ってもらった。
うれしくて、近くの空き地でたくさん練習して、手に入れたその日にはもう、乗れるようになった。

今度の休みには、あの道を走ろう。

この町は丘の形をしていて、
僕は休みのその日、丘のてっぺんまで、自転車で漕ぎ着けた。

ここからは、町が見渡せる。

漕ぎ出せば、長くゆるやかな下り坂が続くのだ。
それをひたすら、自転車で下り降りるのだ。
きっと、きもちがいいはずだ。

ペダルにかけた足を、くいっと押し込む。
さっそく、タイヤはくるくると転がりだす。
さっきまでは感じられなかった、涼しい風が僕の体に吹き渡る。
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