元姫は辛くても笑う
聞き覚えのある声だったため、後ろを振り返る。それはお父さんでもお母さんでもなく……私の大好きな………
「ゆ、き兄……帰ってたの??」
雪兄は私の兄如月雪人(きさらぎゆきと)。
私が桜氷と紅雅ということを知っている極わずかな人。
家族にはまともな人がいない中、雪兄だけは違った。
大事にして育ててくれた。
大切な家族。
「ケガしてないか?」
階段から降りてきてとても強く抱きしめる。
因みに言うと若干シスコン。
雪兄のことは好きだけどそれがちょっとね……。
「こんなに可愛い妹が怪我したらどうしようってずっーっと心配してたんだよ?本当に……強いからってそんなことして………」
「ちょ!雪兄!!声が大きい!!」
ほんとKYなんだから……
まぁ、そこが面白いんだけどね〜
「……今日、行くのか?」
「うん……言われたしね。」
私の家では親がルール。
反抗なんてできたもんじゃない。
1度だけ、反抗したんだけど……行きたくないって言ったら……2週間監禁されてから、逆らうの怖くて……って桜氷が何言ってんだろ………
「雪兄大学は?」
「休み。帰ってきてすぐ莉子の付き添い頼まれた。」
「ご、ごめん………せっかくの休みなのに……」
雪兄は大学生で、ほぼ毎日寮生活だから。
それに休みだって少ないし……
ゆっくりして欲しかったのに………。
「大丈夫だよ。世界一大事な妹が危ない目にあって欲しくないしね〜!」
「……」