冷徹御曹司と甘い夜を重ねたら、淫らに染め上げられました
人のことをデリカシーがないなんて言っておきながら、私も大概だ。誰だって嫌な過去のひとつやふたつくらいあるのに、私はそれを敢えて聞き出そうとしている。案の定、安西部長の手がピクリと止まる。

「お前はほんと、遠慮なしにずかずか人の中に入ろうとするよな」

やれやれといったふうに安西部長が肩を竦める。

「すみません、気になっちゃったもので……」

やっぱり、過去について触れられたくない何かがある。そう直感した。

なにか私にできることがあるなら……って、なんでこんなふうに思うんだろう。無性に安西部長のことが気になってしょうがない。

すると、黙っていた安西部長が深くため息をついて口を開いた。

「誰かと一緒に仕事をして、もし相手が失敗したら……“大丈夫だ、平気だ”なんて言いつつも俺はそいつを心のどこかで恨んでしまうかもしれない……だったら最初から全部ひとりでやればいいって、ずっとそう思ってきた。けど――」
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