冷徹御曹司と甘い夜を重ねたら、淫らに染め上げられました
「お食事、すごく美味しかったですね、特にあの金目鯛なんて最高に柔らかくて」

まだ口の中に余韻が残っているようで、思い出すだけでもまたお腹が鳴りそうになる。

「ほんと、うまいもの食ってるときのお前の顔は幸せそうだったな、見てて飽きない」

「私、飽きさせない女ですから」

「ぷっ、なんだそれ」

食事を満喫して気分が高揚したまま部屋に戻る途中、廊下の向こうから歩いて来る人物を見て、一気にそれが撃沈した。

「よっ! 安西じゃないか、久しぶりだな。あ、また会ったね」

うげ、佐々岡さんだ……。

せっかく美味しい食事を堪能していい気分だったのに、こんなところで佐々岡さんに遭遇するなんてタイミングが悪すぎる。安西部長の表情を横目で伺うと、案の定、あからさまにムッとして不機嫌丸出しの顔をしていた。

「なんのようだ?」

「久しぶりに会ったっていうのに、相変わらず無愛想なやつだな」

「会いたくて会ったわけじゃないだろ。こんなところで何してるんだ? 旅行ってわけでもないだろうしな」

安西部長はギロリと佐々岡さんを鋭く睨んだ。

ふたりの間にバチバチと今にも火花が飛び散りそうになっている。

あんな目で睨まれたら、私なんか縮こまって動けなくなりそう!

それなのに、平然と笑顔を向けている佐々岡さんの図太い神経は見上げたものだ。
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