泣いた、緋鬼
そう言うと、母は私の手をキュッと優しく握った。





「未菜、言ったわよね?あなたは、恋愛できないの。実際、彼に会ってから発作が起きる回数が増えたでしょ?未菜の気持ちは尊重したい。





―――でもね、私は大事な娘を早死にさせたくはないのよ」







真剣な母の瞳に一瞬心が揺らいだけど、そのときに、いつかの希君の言葉がフッと頭を過った。









―――『いつか、命をかけても良いって思える恋、出来ると良いな』―――








―――私ずっと恋愛しちゃ駄目だと思って、必死に誰かを好きにならないように頑張ってきた。








―――でも。









「――お母さん。私ね、希くんになら、命をかけてもいいかなって思ってるの」








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