敏腕社長は哀しき音色に恋をする 【番外編 完】
「神崎さん、少しいいですか?」

就職して2年目に入って、少しだけ仕事に余裕が出てきた頃、スタジオで羽山先生に呼び止められた。

「突然なんですが、バーで週2回ほどピアノの生演奏をする気はないですか?」

「えっ?」

「私の知り合いが、毎週金・土曜の夜にバーで演奏をしていたのですが、家庭の都合で続けられなくなってしまったんです。
それで、誰かその後を引き受けてくれる人はいないかと、紹介を頼まれたんです」

「生演奏……」

「どうですか?
オーナーが私の知り合いなので、いろいろと融通が利きますし、相手はプロのピアニストが欲しいのではなく、レベルの高い奏者を紹介して欲しいってことなので、私は神崎さんが最適だと思っているのですが」

「先生が私をと言ってくださるなら……でも、私にできるのか、、」
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