敏腕社長は哀しき音色に恋をする 【番外編 完】
ピアノを弾き始めると、時間の経過がわからなくなるのは私の悪い癖だ。
今夜も気付けば恭介さんが帰宅していて、ソファーで私の弾くピアノを聴いていた。

「今日はかわいらしい曲を弾いてるんだね」

「おかえりなさい、恭介さん」

「ただいま。今の華は、すごく機嫌が良さそうだ」

「私、もう一度ピアノを弾くきっかけになった日を思い出していたんです。
羽山先生のスタジオをで、小さな女の子に促されてこの曲を弾きました。
何ヶ月もピアノから離れてたんですけど、あの時、どうしてもピアノから離れられないって認めざるを得なくなったんです」

「そうか。
華は原点に戻って見つめ直せたんだね。
華、僕は何度でも言うよ。
僕は華の味方だ。
振り返って辛くなった時は、いつでも頼っていいんだよ」

「恭介さん……」

「華僕は華のことならどれだけでも待てる。だから、ゆっくり自分の気持ちを見つめて答えを出して」




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