Mein Schatz
エヴァンは、昔読んだことのある本の内容を思い出した。

「愛してる」という言葉ほど、口にすることが難しい言葉はない。

本当にその通りだとエヴァンは思う。この幸せな生活の中で、「愛してる」という言葉がないことに、エヴァンはこれでいいのだろうかと考えてしまうのだ。

そしてある日の夜のこと。

エヴァンとクラウディアは、食後のコーヒーを飲みながら楽しく話していた。

「明日から私は休暇に入る。二人で少し遠出をしないか?」

エヴァンがそう言うと、クラウディアは「本当ですか!?」と嬉しそうにした。

「昼間は家を空けることが多いし、君にも寂しい思いをさせてしまっていないか?」

エヴァンがそう言うと、クラウディアはそっとエヴァンの手に自分の手を重ねる。クラウディアの手は、エヴァンの手よりうんと小さい。

「大丈夫です。こうして私に優しくしてくださっています。それだけで、私は幸せなのです」

クラウディアをエヴァンは優しく抱きしめる。いつも、エヴァンはクラウディアに優しく触れる。クラウディアが傷つかないようにーーー。
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