real face
「俺、この話を蘭さんにしてもいいのか迷ったんだけど……」

「迷ったんなら、言わなくていいですよ」

どうせ聞かなくてもいいような話なんだろうから。

「気にならない?昨日の夜の話なんだけど」

昨日の夜?
昨日はノーザンで、主任がごはん食べに来て、エレベーターのところで別れる前にキス……。

まっまさか、見られてたなんてことは、ないよね?

「俺、宮本課長と住んでるマンションが近いんだよね」

宮本課長?
どうしてここに宮本課長がでてくるの?

「俺、昨日の夜21:00頃に偶然なんだけど宮本課長のマンションの前を通って、見ちゃったんだよ……」

聞かなくていいなんて思うのに、結局耳を傾けてしまう私。

「佐伯先輩が、宮本課長の部屋に入って行くところを」

それが、どうしたって言うの?

「夜な夜な、教事1課長と、部下の主任の密会!」

もう、なんなの、この人………。
前半、珍しく真面目な話ができたと思っていたのに。
あまり関わりたくない存在だと感じてたけど、同期として解り合える部分もあるって思い始めた矢先だったのに。
やっぱり残念な人だよ、迫田さん。
佐伯主任が必要以上に迫田さんに近付くなって言ってたのも、納得できる。

「はぁ。私ちょっとお手洗いに行って来ますから」

「あ、ちょっと待って蘭さん!ひょっとしてあの2人の関係を隠す為のフェイクなんじゃないかって……ねぇ!」

「………………まともに聞くんじゃなかった」

もうすぐ休憩時間も終わっちゃうし、化粧直しでもしてこよう。
今日は佐伯主任の言いつけどおり、バッチリメイクだから最後まで化粧崩れしないようにしておかなきゃ。

佐伯主任が営業から広報に異動になったのは、広報の上村課長が引き抜いたらしいとは聞いていたけど、それだけじゃないんだろうな。
主任はその真相を知っているんだろうか。
聞いたら教えてくれる?主任………。

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