real face
私ったら、自惚れてたのかな。
佐伯主任は私のことをどう思っているのだろう。

私……佐伯主任のことがどうしようもなく、好き。
今更ながら実感してしまったこの想いを、どうやったら上手く伝えられるの?
それとも、伝えたら迷惑なのかな… …。

~♪~♪~♪

携帯が突然鳴り響き、ビクッと飛び跳ねる。
ま、まさか、主任?
そんな訳ないか、仕事中にかけてくるなんて有り得ない。
今頃、仕事モード全開なんだろうし。
妄想の世界に飛び立とうとしたけど、携帯が呼んでいるので仕方なくディスプレイを確認する。

…………誰だろう?
登録していない番号からだった。
少し迷っていると、着信音が途切れてしまい、また静かになる。
知らない番号からの着信にはなるべく出ないようにしてるけど、誰からだったのだろう。
またかかってきたら出ようかな。

仕事モードの主任に想いを馳せてみる。

『お前がいないから、ちっとも捗らない』

なんて思ってたりして。

『お前がいないから、俺のペースが乱されなくてやり易い』

多分こっちだろうな、うん。
もし本当にそうだとしたら、凹む。
主任、仕事中は無理だろうけど、せめて休憩中くらいは思い出して欲しい……私のことを。

会いたい……声が聞きたいよ…………。

~♪~♪~♪

また携帯が鳴り始めた。
画面にはやはり見覚えのない番号が表示されている。
多分さっきと同じ番号だろうから、出た方がいいかもしれない。
ドキドキしながら、通話のボタンを押して携帯を耳に近付けた。

「もしもし?」

『もしもし、蘭まひろさんの携帯で間違いないでしょうか』

「あの、失礼ですがどちらさまですか?」

『RYUZAKI工房の、龍崎貴浩です』

「たっ、貴浩部長ですか……こんにちは」

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