real face
私の6歳の誕生日、小学校入学のお祝いも兼ねて3人で来たのを思い出す。
新と信が生まれる前、母と父と私の3人で。
そういえばこのレストラン、蘭会計事務所の近くだ……。

食事をして、近くを散策する。

「あ、この公園、まひろ好きだったわよね。よく遊びに来たのを覚えてる?」

「うん、覚えてるよ」

「この道を真っ直ぐ行けば、お父さんの事務所があるわね」

お母さん………。

「あのね、お父さんが私の勤務先"シャイニング"の顧問会計士になったんだ」

「あら、そうなの?」

「うちの部署とも仕事上で繋がりができて、私も主任と一緒に担当してるから、蘭事務所にも行ったんだよ」

「………まひろ、辛くない?」

心配そうな顔のお母さんに、笑顔で答えた。

「うん、大丈夫。私には佐伯主任がついているから!」

しばらく公園で、昔の思い出話に夢中になっていた。

「さあ、そろそろ帰りましょうか。今日はお母さんがシフト入るんだからね!手伝ってくれるでしょ、まひろ」

「うん!スーパーで買い物して帰ろう……」

公園の脇の道路を一台の車が走っていった。
見間違えるはずがない。

シルバーのあの車は、佐伯主任の車、だよね。
まだ勤務時間内、外に出るときは社用車なんじゃないの?
だっていつも電車通勤だし。
あっちから来たってことは、蘭事務所からの帰りなのかもしれない。

それよりも何よりも……。
助手席に乗っていたの、女性だったよね。
私の見間違いでなかったら、多分あれは、私がよく知っている、あの人。
走り去って行ったほんの一瞬だったけど、私にはスローモーションのようにゆっくり感じられた。

これは幻覚?
そうだったら、私の見間違いならいいのに。
ねえ、どういうことか教えて……。




なつみん。




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