real face
そうか、修も好きなんだな。
蘭さんのことが。

「修一、まだ分からないのか。お前とまひろは無理だって。その自己中心的な考え方、変わってないな」

「世間一般的に従妹と結婚しても何も問題ないはず。兄貴こそ平和主義……いや、ことなかれ主義なところ変わってないよな。周りの大人の言うこと聞いて、自分の気持ち圧し殺して。兄貴のそういうところが昔から嫌いなんだよ」

おい、ここはシャ食だぞ。
こんなとこで兄弟喧嘩なんて、やめてくれよな。

「修、引っ越しはいつだ。もし都合がつけば手伝ってやってもいいけど」

「今月末の土日だけど、荷物そんなにないから。もし暇なら、あっちの片付けを手伝いに来てくれよ!土日は休みだよな?翔」

6年もの間、1回も行かなかったんだな俺。
いや、行かなかったんじゃなく"行けなかった"んだ。
俺は行こうと思ったのに、修が「来るな」って拒んだから。
最後の最後になって、来いって言うんだな?

「分かった。最後だし、1回くらいは行ってやるよ」

月末の土日か。
特に予定は無かったはず、だよな。

「今日俺がここに来るって兄貴も翔も知らなかったんだろ?ってことは、まひろだって勿論知らないんだよな」

「おい、修一……。口を開けば『まひろ、まひろ』って。知るわけないだろ。って言うか、そもそもお前が知らせてこなかったんじゃないか!」

「ああ、そうだったな。俺が知らせてないんだから、知るはずがないんだよな。OK」

「蘭さんが知ってたらなんかまずいのか」

「そういう訳じゃないけど、知ってて欲しかったような、そうでないような」


「ふーん。なんか後ろめたい事でもあるんじゃないのか?ちゃんとあっちの女とは切れてるんだろうな。追っかけて来られたりでもしたら面倒だぞ」

「ああその点なら抜かりない。俺はちゃんと選んでるから大丈夫。割り切った関係しか持たない主義なんでね」

……割り切った、関係?
なんだそのジゴロみたいな発言は。

「引っかかったな修一。そうかやっぱり女がいたんだな。まひろのこと一途に想っていたのかと思えば。しかしこんな簡単なカマ掛けにかかるととはな……」

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