【B】箱庭の金糸雀 ~拗らせ御曹司の甘いぬくもり~


冷静になろう。

まだ俺たちは一歩を踏み出したばかりなんだから。

これから俺たち二人の時間は長くて楽しいはずだから。



幸せはただ
待つだけのものじゃなくて、
幸せは
自らが動いて引き寄せるもの。



世の中、
良いことも悪いことも同じ数だけあるはずなんだ。

その中で嫌な思いだけが残るのは、
その時の苦痛が自分の中に刻まれて消えていかないから。


満たされない思いは強く残り続ける。



だけど視線を移せば、
気が付かなかった幸せの宝箱があちこちに散りばめられている。


だからこそ、そんな宝箱を一つずつ、
如月と二人で見つけ出しながら、
幸せを噛みしめて歩き続けたい。



死ぬ瞬間まで、
俺が傍で守り続ける。



如月の笑顔を守りながらずっと……。



だから今は一瞬一瞬大切に宝探しを楽しんでいきたい。



「光輝、シャワー貰ったよ」


そう言って浴室から出てきた如月は、
濡れた髪をタオルで巻いて、
ガウンを羽織った姿。


「早く入ってきたら?
 そしてアタシたちの家に帰るわよ。

 帰ったら……続き……やってもいいから……」


そう言いながら如月は顔を赤らめて、
クルリと背を向けて着替えに行く。


クローゼットを開けて着替えに手をかける如月を背に、
浴室に入りシャワーを頭から浴びる。


お湯を時折、
冷水に変えてかぶりながら心を落ち着かせて出ると、
如月は鏡の前で、
髪の毛をドライヤーで乾かしていた。



浴室から出て、ガウンのまま如月の後ろへと立つと、
ドライヤーを背後からスルリと受け取って、
そのままヘアドライをする。


無心に、如月の髪に指を通しながら、
ドライヤーの風を当て続ける時間。


そんな些細な時間でも、
幸せを感じてる俺が存在する。


そして如月の髪が乾き俺の出掛ける準備も出来た時、
スマホから聖仁へと連絡をして、
俺たちはホテルを後にした。



二人の指をお互いに飾る結婚指輪が、
幸せを更に感じさせてくれる。



聖仁が運転する車でホテルを出て、
そのまま系列のデパートで買い物をし、
昼食をとって自宅へと戻った。



自宅に戻った後はお互いにルームウェアーに着替えて、
二人で同じソファーに腰かけて映画を見たり、
俺の傍でアコースティックギターを鳴らしながら、
歌ってくれる如月。
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